ざ・シークレット
「あの、すみません。
ここの野球部に猿野先輩…猿野天国さんていますか?」
ある日のこと。
十二支野球部に二人の女子中学生が来訪した。
それを聞いたのは虎鉄&猪里の2年生レギュラーコンビである。
「猿野?そしたらここのお騒がせ1年ばい。」
「Hey お嬢さん、猿野に何の用Daい?」
二人は猿野に女性の来客があることを非常に意外に思った。
しかも二人ともなかなかに美少女といえる容貌である。
虎鉄も猿野の名前が出ていなかったら速攻で口説きモードにはいっていただろう。
「ホントですか!?
っしゃ〜〜!!やっと猿野センパイに会えるv」
質問をしてきた少女が突然歓喜の声を上げる。
「やったじゃん、衿子〜〜!
あの、それで猿野センパイは今どこですか?!」
もう一人の少女も猪里に詰め寄り、猿野の所在を聞く。
猪里と虎鉄は、驚きと戸惑いの中、やっとこちらから質問した。
「お嬢さんたち、猿野の何なんDaい?」
「「え?」」
すると今度は少女二人の方が驚いた顔をした。
「何って…。
王野中学のときの猿野センパイのファンですけど。」
「あれ?十二支にはまだファンクラブないんですか?」
「…は?」
少女二人の心底意外そうな顔に、驚愕の眼を開く高校男子二名。
「猿野のファンって…。
あの変態バカWo?」
呆然と呟く虎鉄の言葉に、衿子と呼ばれた少女のほうこそびっくりした。
「変態って!
猿野天国先輩って言えば王野中でもbPの秀才で、力も強くて頼りがいあるし、
クールな笑顔ですごく人気あった人ですよ?!」
「それ、人違いじゃなかと…?」
猪里も呆然と言葉を呟く。
しかし「さるのあまくに」などという変わった名前が同じ学校内に二人といるともあまり思えない。
「どういうことDa?」
その時。
「こら〜〜キザトラ!!
練習ほっぽらかしてナンパやらかしてんじゃねえ〜〜!!」
話題の主が大声と共に走り寄ってきた。
すると。
「「猿野先輩!!」」
大きな瞳に星を輝かせて、女子中学生二人が目当ての人物に詰め寄った。
「なっ…。
久森…と茅崎…!?
お前ら、何でこんなとこに?!」
猿野は女子中学生二人を見ると身体をわずかに後退させる。
「何って、猿野先輩に会いに!!」
「先輩が卒業しちゃって、王野中全体もすっごく寂しいんです…!
それに先輩、どこの高校に行ったのか誰も知らなかったし。」
二人はよっぽど嬉しかったのか、その場で涙ぐみはじめる。
その姿を呆然と眺める虎鉄と猪里。
「と、とにかくこんなとこで泣くんじゃない。
こっちに。」
猿野はそそくさと二人を連れて校舎裏まで移動した。
########
「久森、茅埼。
君らが高校まで来てくれたのは…その、嬉しいんだけど。
他のコたちには内緒にしててくれないか?」
「え?どうしてですか?」
「皆猿野先輩に物凄く会いたがってますよ?」
「それに、どうして十二支に先輩のファンいないんですか?
さっきの二人もすごく意外そうな顔してましたけど。」
「…それは…その。
オレ、高校から野球始めただろ?
ほら、素人だからカッコ悪いし…そういうとこ見せるのもちょっと恥ずかしいっていうか・・・。」
(つーか追っかけられるのしんどかったからだけど…)
そう。
実は猿野天国。中学時代は非常にモテた。異常に人気者だった。
女子も男子も猿野に憧れ、追っかけをする者は後を絶たず。
現在の犬飼も真っ青なほどの鬼ごっこを中学時代に繰り広げていた。
3年にもなる頃にはにっこり笑って交わす術を見につけていたが。
高校では、なるべく女にも男にも目をつけられないようにしようと思案した挙句。
「攻撃は最大の防御」ということで女に告白し接近し男にも女装して迫るようにしていたのである。
そうすると、しっかりヒイてくれて。
ある程度落ち着いた高校時代を送っていたのだ。
なのに。
(こんな早く見つかっちまうとは…。)
そんなわけで、早速ファン二人に口止めをしようとしていたのだ。
だが。
「そんな、猿野先輩ってば可愛いんだから!
もう、心配しなくたって私たちどんな先輩でも大好きですよ!」
「そうですよ!
それにもうここに先輩がいるって聞いた時点でメール送っちゃったし。」
「え。」
「「「「「「「猿野センパ〜〜〜イっ」」」」」」
「な、何?なに?この女の子の群れは!!
兄ちゃんのこと呼んでるけど!?」
「さ、さあ…よく分からないっすけど
声色が犬飼くんの追っかけ隊とそっくりっすね…。」
「あ〜〜らら。」
報道部の部室よりグラウンドを眺めていた沢松は、一言漏らす。
「梅さん、あしたっから校内やかましくなりますよ?」
end
沙雪さまよりリクエストいただきました。
…野球部員との絡みがほとんど出なくてすみませんでした。
それに何か全体的にメガネ猿っていうよりハン猿…。
頭が良いということを表現するのは…難しくて…本当にすみませんでした!!
こんなヤツですがまたのご来訪お待ちしてます!
改めましてリクエスト、ありがとうございました。
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